Rehabili knock

大学病院で勤務する理学療法士

ランニングで膝を痛めた人必見!!  理学療法士が勧める膝を痛めない走り方

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ランニングは世界で最もポピュラーなスポーツだ。

ランニングランナーの傷害率は高く、その大きな理由が何度も繰り返す床への衝撃である。

 

そのため、ランナーは膝損傷を起こすことが多い。

 

走るたびに膝にかかる負荷量は約300kgにもなると言われている。

 

 そこで今回はサンパウロの市立大学のMatheusらの報告をもとに膝の痛みをなくす方法を考えてみよう。

 

膝への衝撃  大きく2つの接地パターン 

 何度も繰り返す床への衝撃が膝へ負担をかける理由である。

そしてランナー達の床への衝撃の受け方は大きく2種類に分けられる。

 

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踵から足をつく後足部パターンと、指の付け根当たりで足をつく前足部パターンである。

 

 実は前足部パターンの方が後足部パターンに比べて地面への衝撃力が3倍低い。

 

 後足部パターンで走る人は前足部パターンに切り替えることで膝にかかる負担が減るのだ。

後足部パターンと前足部パターンでは、足をつく時にかかる衝撃が大きく違う。

この衝撃を膝にかかる力で考えてみよう。

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Biomechanical Differences of Foot-Strike Patterns During Running: A Systematic Review With Meta-analysisを参考に筆者作成

 

膝にかかる力は運動学的に考えるとわかりやすい。

 

まず、膝にかかる負担床半力(膝にかかる反発力)×モーメントアーム(膝から反発力までの垂直距離)と言われている。

 

言い換えると、床半力(膝にかかる反発力)モーメントアーム(膝から反発力までの垂直距離)

のどちらかが増えれば膝にかかる負担が増大するというわけである。

 

床半力(膝にかかる反発力)というのは、体重や走る速度によって影響する。体重が重たくなれば当然、膝にかかる負担は大きくなるし、走るスピードが早くなっても同様だ。

 

モーメントアーム(膝から反発力までの垂直距離)が長くなると膝にかかる負担が増えるというのは極端な話だとウサギ飛びがわかりやすい。

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ウサギ飛びは膝への負担が強く、近年の小学校では実施を禁止している地域もある。

昔は根性論だと、よくやったものだが。。

 

これを見ると、モーメントアームがとても長くなることがよくわかる。

 

本題に戻るが、後足部パターンと前足部パターンにも同じことが起こっている。

 

写真を見ると前足部パターンはモーメントアームが少し長くなっている。

 

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前足部パターンが膝損傷を減らす大きな理由である。

 

つまり、膝の痛みを減らせるように走るためには、前足部パターンでゆっくりとしたスピードで走ることだ。

 

実際に箱根駅伝に出場するほどのトップランナー達は膝の損傷例が少ない。

箱根駅伝を観戦した時も多くの選手が足のつき方が前足部パターンであった。

 

前足部パターンの走り方を身につけよう 

今まで後足部パターンで走っていた方がいきなり前足部パターンでの走り方をイメージするのは難しいものである。

 

見よう見まねで前足部パターンに切り替えても、つま先から足をつけてしまってはむしろ膝の負担を増やしてしまう。

 

前足部パターンは指の付け根あたり(母子きゅう)あたりで接地しなければならない。

 

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そこでハエン大学のpedroらは前足部パターンの走り方を手に入れる方法に

裸足ランニングを提唱した。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

pedroらは健常成人39人を対象に裸足ランニング群20人とくつを履いてランニング群19人で12週間のトレーニングを実施した。

 

その結果、裸足トレーニングはこれまで、後足部パターンで走っていた人が前足部パターンに移行することができたと報告している。

 

近年は裸足でランニングを行うことが注目されており、

アメリカのタフツ大学のkellyらも裸足ランニングすることでランニング障害を予防できることを報告している。

 

もし裸足ランニングを挑戦する方がいるなら、ケガをしないようにアスファルトの上ではなく、芝生やランニングマシーンの上などで実践することがおすすめだ。

Reference 

Matheus O Almeida: Biomechanical Differences of Foot-Strike Patterns During Running: A Systematic Review With Meta-analysis. 2015 Oct;45(10):738-55

 

Pedro A Latorre-Román: Effects of 12 weeks of barefoot running on foot strike patterns, inversion-eversion and foot rotation in long-distance runners. 2019 Nov;8(6):579-584.

 

Kelly Murphy:Barefoot running: does it prevent injuries? Sports Med. 2013 Nov;43(11):1131-8. 

 

アップテンポの音楽を聴けばランニングタイムが速くなるメカニズム

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音楽を聴きながらランニングすることはよくない。

自分の走るテンポを狂わしてしまうためだ。

実際に自宅の近くの河川敷を歩いてみると、ほとんどの人がイヤホンをつけずに淡々と走っている。

 

そんな中、ウェイン州立大学のJacob らによってこんな報告が上がった。

アップテンポの音楽を聴きながら運動をすることで、疲労感を軽減することが初めて証明された。

 

 

 

今回はアップテンポの音楽が運動中に及ぼす影響について考えていこう。

 

本当にアップテンポの音楽を聴いた方が良いのか

Jacobらは22-31歳の男女を対象に自転車エルゴメーター(自転車のような形をしたトレーニングマシーン)を使い、4Wからスタートし毎分ごとに4Wずつ負荷を増やしていくテストを行った。

およそ、平坦な道を自転車で漕ぐ時に足にかかる負荷がおよそ10W程度と言うとイメージしやすいのではないだろうか。

 

このテスト中にアップテンポの音楽を聴きながら限界まで自転車エルゴメーターを漕いだ時、そして音楽を聴かずに漕いだ時、それぞれの大腿四頭筋にかかる疲労度を筋電図で測定した。

 

筋電図は筋肉の発火頻度、運動単位数を視覚的に評価できると言われており、客観的な評価ができる。

疲労感を評価するために筋電図を用いることは、この研究の優れている点と言える。

 

その結果、アップテンポの音楽を聴きながら行った群の方が、筋出力が大きく上がったのだ。

さらにJacobの報告はそれだけに止まらなかった。

 

疲労感を生じる閾値にも有意な差が生じたのだ。つまり大腿四頭筋が疲れにくいということだ。

 

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筆者にて編集

 

 

とても興味深い研究に思う。アップテンポの音楽を聴きながら運動すればより高い負荷で運動することができるため、効率的で効果が出やすくなるのではないだろうか。

 

しかし、これを読んだ方々はこう思うのではないだろうか。

音楽を聴いたらテンションが上がるんだから、いつもより頑張れるのも当然だ!

 

 

確かにその意見は確かに一理あるように思う。しかし、いつもより頑張っているということは、必ず心拍数が上昇しているはず。

 

今回の研究の参加者では音楽を聴いた群とそうでない群で心拍数はなんと変わらないという結論に達した。心拍数が上がっていないということは、音楽を聴いた群がいつもより頑張っているわけではないのだ。

 

ではなぜアップテンポの音楽を聴くことで、疲労感を感じにくくなるのか。

 

疲労感を軽減するメカニズム

その謎を解く鍵となったのが、脳波の変化だ。

イギリスのブルネル大学のBigliassiらは音楽を聴いている時の脳波の着目した。

 

その結果アップテンポの音楽を聴くと、脳内のθ波が減少することを明らかにしたのだ。

 

θ波とは4-7Hz(1秒間に4-7回振動する)し、主にリラックスした時や深い瞑想をする時にもこのθ波が出現しやすい。

 

よくひらめきが生まれるのは、このθ波の時と言われる。

 

Bigliassiは運動中にアップテンポの音楽を聴くことで、連想的思考ができなくなり、ある意味ゾーンに入るような状態になると結論付けている。

 

さらに音楽を聴きながら運動を行った場合と音楽を聴かない場合と比較して、

運動中の脳の活動を調べた。

 

実際、運動中に音楽を聴いた場合の方が側頭葉や島皮質の活動が増加することが報告されている。

 

これらの結果から脳の疲労に関連した領域に影響を与え、疲労感を感じる閾値が上がったと考えられている。

 

では実際にどんな音楽が良いのだろうか。

 

今回の研究結果では136-160bpmまでの曲が使われているが、高いbpmほど良い結果になるわけではないことがわかった。

 

つまり、アップテンポで自分の好きな曲を聴きながら走ることが最も効果的であると思われる。

 

そんな私も最近好きなDizzel Rascal &Calvin Harrisの「Hype」を聴きながらランニングをしてみようと思う。

 

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Reference

 

Jacob Centala: Listening to Fast-Tempo Music Delays the Onset of Neuromuscular Fatigue.jornal of strength and conditioning research.2019

 

Bigliassi M. Cerebral mechanisms underlying the effects of music during a fatiguing isometric ankle-dorsiflexion task. Psychophysiology 53: 1472–1483, 2016.

カフェインを摂ると足が速くなる?

カフェインの摂取が運動時に有益な効果が現れています。

 

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Clarkeらはカフェイン3mg/kgの量が含まれたがコーヒーと、カフェインが含まれていないコーヒーをそれぞれ摂取させて、違いを比べたところカフェイン入りコーヒーを飲んだ時の方が、1.3-1.9%ほどランニングタイムが速くなったという報告も行いました。

 

他にも、Grahamらは150-300mgのカフェインと摂取しトレッドミルで測定したところ1500mのタイムが1.45%速くなるとの報告も出ています。

  

ではなぜ、カフェインの摂取によってランニングスピードに寄与するのでしょうか。

 

 

カフェインの作用

筋肉を収縮するためには、筋小胞体から出るカルシウムが作用します。しかし、カルシウム濃度が上がると筋肉を過収縮させてしまいます。カフェインには、この過収縮を防ぎ、筋肉をリラクゼーションする働きがあります。(Gold stein 2010)

 

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図 筆者作成

 

 筋小胞体はカルシウムポンプを持ち、能動的にカルシウムイオンを取り込んでいます。

筋細胞に興奮が起こると、筋小胞体はカルシウムイオンを細胞質に放出します。

 

アクチンフィラメントはトロポニンやトロポミオシンという調整蛋白を含んでいます。

 

ミオシンフィラメントは架け橋を構成し、収縮に際してA TPを分解しエネルギーを供給します。

 

カルシウムイオンの濃度が増加し、カルシウムイオンとトロポニンが結合すると、アクチンフィラメントから離れ位置を変えてA TPを分解すると、そこでアクチンフィラメントと結合し、元の位置に戻ります。この運動の繰り返しによって筋肉の収縮は起こります。

 

カルシウムイオンがアクチンフィラメントのトロポニンと結合して、骨格筋の収縮を制御しているので、これをアクチン関連制御と言います。

 

カフェインはこのアクチン関連制御に関与し、筋肉の過収縮を防ぎ、エネルギーを節約する働きがあるのです。

 

 

また、有酸素運動時にアデノシン受容体の拮抗作用が働き、痛みや疲労感を減らす効果があると報告されています。これをエルゴジェニック効果といいます。(Davis 2009)

 

これらのことから、自覚的な疲労感を減らし、ランニングスピードを上げることができると言われています。

 

 

そのため、Collompはカフェインを摂取することで、短距離走のスピードが速くなる可能性を示されているのです。

 

カフェインの量

では具体的にどの程度の量が効果的なのでしょうか。

 

2週間の運動においてFerreiraは(5mg/kg)のカフェインを運動前に摂取した効果を検討しました。その結果、選手たちの筋肉へのダメージが減少することが明らかとなりました。

 

またさらに炭水化物のみの摂取している選手と比較して、炭水化物+カフェインを摂取している選手の方が、エネルギー キャパシティーが増大することを示しました。(Taylor 2011)

 

そんな中、よりカフェインの摂取量を増やした方が、得られる効果も高いのではないかと考えた方々がいました。

 

Pedersenらはこれまでよりも多い8mg/kgのカフェインを運動前に摂取しました。

その結果、新たな効果が明らかとなりました。

 

その研究によるとグリコーゲンの使用を出来る限り最小限に抑えて、さらにミトコンドリア活動も増加することが示されたのです。

 

 

つまり、H I ITのパフォーマンス能力にも影響することが示唆されたのです。

また、近年はカフェインと他の栄養素を組み合わせたマルチサプリメントについても注目を集めています。

 

 

Fukudaらは、カフェインにクレアチンとアミノ酸を組み合わせたことで、ランニングタイムにも効果が現れることを示したのです。

 

しかしまだ、これまでにランニングスピードとカフェインの関係を実際に計測した研究は多くありません。

 

Alexandreらはカフェインの摂取(5mg/kg)の有無で800mのタイムに差が出るか検討しましたが、明らかな差は生じませんでした。

 

もしかすると、カフェインの摂取に加えてアミノ酸などのマルチサプリメントでの介入を行えば、効果が出る可能性があるかもしれませんね。

  1. Clarke N.D., Richardson D.L., Thie J., Taylor R. Coffee Ingestion Enhances One-Mile Running Race Performance. Int. J. Sports Physiol. Perform. 2017:1–20. doi: 10.1123/ijspp.2017-0456. [PubMed] [CrossRef] [Google Scholar]
  2. Graham T.E., Hibbert E., Sathasivam P. Metabolic and exercise endurance effects of coffee and caffeine ingestion. J. Appl. Physiol. (1985) 1998;85:883–889. doi: 10.1152/jappl.1998.85.3.883.
  3. Goldstein E.R., Ziegenfuss T., Kalman D., Kreider R., Campbell B., Wilborn C., Taylor L., Willoughby D., Stout J., Graves B.S., et al. International society of sports nutrition position stand: Caffeine and performance. J. Int. Soc. Sports Nutr. 2010;7:5. doi: 10.1186/1550-2783-7-5. [PMC free article] [PubMed] [CrossRef] [Google Scholar]
  4. Davis J.K., Green J.M. Caffeine and anaerobic performance: Ergogenic value and mechanisms of action. Sports Med. 2009;39:813–832. doi: 10.2165/11317770-000000000-00000.
  5. Collomp K., Ahmaidi S., Audran M., Chanal J.L., Prefaut C. Effects of caffeine ingestion on performance and anaerobic metabolism during the Wingate Test. Int. J. Sports Med. 1991;12:439–443. doi: 10.1055/s-2007-1024710.
  6. Ferreira G.A., Felippe L.C., Bertuzzi R., Bishop D.J., Barreto E., De-Oliveira F.R., Lima-Silva A.E. The Effects of Acute and Chronic Sprint-Interval Training on Cytokine Responses Are Independent of Prior Caffeine Intake. Front. Physiol. 2018;9:671. doi: 10.3389/fphys.2018.00671.
  7. Taylor C., Higham D., Close G.L., Morton J.P. The effect of adding caffeine to postexercise carbohydrate feeding on subsequent high-intensity interval-running capacity compared with carbohydrate alone. Int. J. Sport Nutr. Exerc. Metab. 2011;21:410–416. doi: 10.1123/ijsnem.21.5.410.
  8. Pedersen D.J., Lessard S.J., Coffey V.G., Churchley E.G., Wootton A.M., Ng T., Watt M.J., Hawley J.A. High rates of muscle glycogen resynthesis after exhaustive exercise when carbohydrate is coingested with caffeine. J. Appl. Physiol. (1985) 2008;105:7–13. doi: 10.1152/japplphysiol.01121.2007.

9.Fukuda D.H., Smith A.E., Kendall K.L., Stout J.R. The possible combinatory effects of acute consumption of caffeine, creatine, and amino acids on the improvement of anaerobic running performance in humans. Nutr. Res. 2010;30:607–614. doi: 10.1016/j.nutres.2010.09.004.

マラソンが速くなりたい人は必ずH I I Tを知っておこう

高負荷インターバルトレーニング(High-intensity interval training:通称(HIIT)

 

高負荷のトレーニングと低負荷のトレーニングを交互に組み合わせたトレーニング方法で世界中のトップアスリート達がHIITを活用したトレーニングを実施しています。

 

トップアスリート達がHIITを使うようになった大きな理由は、従来のトレーニング方法と比較してもトレーニング効果が高いことが示されているからです。(BurgomasterK.A 2007)

 

その上、トータルの運動時間は短く効率的とも言われていますから、HIITを知っておくだけで、練習効率はグッとよくなるわけです。

 

具体的にHIITについて見ていきましょう。

 

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H I I Tは空腹の状態で行おう

よく筋トレは空腹で実施をしてはいけないという記載を目にします。

本当にそうでしょうか。

 

実はH I I Tは空腹時に実施した方が良いと言うことが明らかとなりました。(Hansen 2005)

 

どうして、これまで言われていたことと逆の反応になったのでしょうか。

 

実際に空腹時でグリコーゲンが低い状態でH I I Tを行った報告がありますので見ていきましょう。

 

CochranらはH I I Tを実施した時の、骨格筋への反応について食前後で比較しました。

 

実施内容はpeak VO2 の90%以下の高い運動負荷を取り入れたH I I Tを4分×5セットを2週間実施するものです。

 

その結果、食前に実施した群の方が、筋肉内のミトコンドリアを増やすp38 MAPK という活性酵素が増大したのです。

 

同様の結果が、Bartlett らの研究でも明らかとなりました。

 

 

その結果、空腹時にH I I Tを実施することが有益であると結論付けたのです。

 

H I I TはPGC-1αを活性化する

PGC-1αという遺伝子の転写を制御する物質は、ミトコンドリアの合成を促進する働きや、血液中のブドウ糖を骨格筋に輸送する役割のあるGLUT4と言う輸送体が増加することが報告されています。(Miura S 2003)

 

このPGC-1αはHIITを行うことで増加することが示されたのです。

 

そのため、ミトコンドリアの増加によって、体内に取り込むことのできる酸素の量が増え、最大酸素摂取量の増加に寄与することが明らかとなったのです。

 

※ランニングパフォーマンスを上げる上で最大酸素摂取量を上げることが重要と言われています。

 

www.rehabiliknock.com

 

H I I Tの効果を示す報告はそれだけに止まりません。

末梢血管の構造や機能にも良い効果を来たし、血液中の乳酸の増加も抑えることができると言われています。(Macinnis 2017)

その上、クレアチンリン酸の働きをも改善することが示されております.(ForbesS.C 2008)

 

 

しかし、あくまで短期間に行った介入研究なので、少なくとも長期間H I I Tを実施した際の効果検討が必要になると思われます。

 

 

1.Burgomaster K.A., Howarth K.R., Phillips S.M., Rakobowchuk M., Macdonald M.J., McGee S.L., Gibala M.J. Similar metabolic adaptations during exercise after low volume sprint interval and traditional endurance training in humans. J. Physiol. 2008;586:151–160. doi: 10.1113/jphysiol.2007.142109.

 2.MacInnis M.J., Gibala M.J. Physiological adaptations to interval training and the role of exercise intensity. J. Physiol. 2017;595:2915–2930. doi: 10.1113/JP273196.

3.Forbes S.C., Slade J.M., Meyer R.A. Short-term high-intensity interval training improves phosphocreatine recovery kinetics following moderate-intensity exercise in humans. Appl. Physiol. Nutr. Metab. 2008

 

走りを極める ランニングパフォーマンスの科学を考えよう。

走りを極める ランニングパフォーマンスの科学を考えよう。

 

どうすれば早く走れるのだろうか??

陸上経験のある方なら常に考えることですよね。

 

そのためには練習が必要なわけですが、

「とにかく走れ」「やる気を入れろ、もう10本追加!!」

熱のこもった、そしてどこか他人ごとのようにな顧問の怒声が私は嫌いです。

 

精神論を否定するわけではありませんが、やはり何も考えずに気持ちだけで練習し続けるのは、どこかで成長が止まってしまいますし、何より怪我につながります。

 

「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。」

これはメジャーリーグで活躍するダルビッシュ有選手の言葉なのですが、本当に的を得た名言だと思います。

 

ランニングについても同様です。

練習から食事まで様々なことを頭を使って練習しなければいけないのです。

 

前置きが長くなりましたが、

中距離・長距離・駅伝・マラソン選手にとって役立つ情報を提供していきたいと思います。

 

 

ランニングパフォーマンスを高める

 

ランニングパフォーマンスというと、あまりききなじみのない言葉ですが、マラソンなどを早く走るための能力のことを言います。

 

ランニングパフォーマンスは次の3つで構成されています。

・最大酸素摂取量

・乳酸作業閾値

・ランニングエコノミー

 

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図 筆者作成

 

では、このランニングパフォーマンスを構成する3つの要素について考えていきましょう。

最大酸素摂取量

最大酸素摂取量は、その名の通り身体の中にどれだけ酸素を取り込むことができるかを表したものです。

 身体の中にどれだけ酸素を取り込むと言っても、たくさん息を吸い込んで肺を膨らませると言う意味ではありませんのでご注意ください。少し呼吸についてまとめておきます。

 

人の呼吸は大きく2つのパターンがあります。

■外呼吸

空気を肺に取り込む呼吸のことです。外から取りこんだ酸素は、気管から気管支を介して肺胞と到達します。肺胞を通る毛細血管とガス交換を行い、血液中に酸素を取り込み、血液中の二酸化炭素が空気中に出されます。


■内呼吸

血液中の酸素を細胞の中に取り込み、細胞内の二酸化炭素を血液中に排出する呼吸のことです。最大酸素摂取量とは、この内呼吸でのガス交換時にどれだけ酸素を取り込めるかを表した量です。

 

外呼吸の場合はたくさん息を吸って換気量を増やすことで体内に取り込む酸素量は増えますが、一方で内呼吸の酸素摂取量を増やすためには簡単な話ではありません。

 

酸素摂取量は次の式で求めることができます。

酸素摂取量=1回心拍出量×心拍数×動静脈酸素格差

 

   走る速度を徐々に上げて運動負荷を上げていくと、必要なエネルギーは次第に増えていきます。エネルギーを作るためには必要な酸素をできる限り細胞内に取り込みます。しかし、細胞内に取り込める量にも限界があります。図で示したように、運動負荷を上げてもそれ以上酸素摂取量を上げられない地点に達したポイントを最大酸素摂取量と言うのです。

 

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最大酸素摂取量に到達しているにもかかわらず、運動負荷を上げてもただの我慢大会になってしましますので、次第に走れなくなってしまいます。

 

 しかし、Welt manらは同じマラソンのタイムでも酸素摂取量は選手によってかなりばらつきがあることを報告しています。つまり、最大酸素摂取量だけではランニングパフォーマンスは説明できません。

 

その他にもランニングパフォーマンスを上げる理由があるはずなのです。

 Welt man は続けてこう述べています。

「乳酸作業閾値の値もランニングパフォーマンスに大きく関わる」

 

乳酸作業閾値

 軽い運動負荷では有酸素運動で効率的に酸素を利用してエネルギーを作りますが、運動負荷が高くなると筋肉に酸素が不足し有酸素運動から無酸素運動となり、エネルギーの作り方も酸素を使用せずに作る嫌気的代謝に代わります。嫌気的代謝は酸素を必要としないため、エネルギー生成効率が悪い上に乳酸を生成する特徴があります。

 

乳酸は名前のごとく酸性の物質ですので、体内に乳酸がたくさん蓄積することで、体内はアシドーシスに傾きます。体内が酸性になってしまうと人は生きていけませんので、代償的に、同じ酸性の二酸化炭素を身体からできる限り排出します。

激しい運動をしている時に、息が切れるのは酸性に傾きすぎないように二酸化炭素を排出する反応だったのです。

 

この乳酸が爆発的に増える地点を乳酸作業閾値(LT)または嫌気性作業閾値(AT)といいます。この乳酸作業閾値ができる限り高い地点になることがランニングパフォーマンスの向上に繋がるとWelt manは言います。

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一般的な健常成人の乳酸作業閾値は、最大酸素摂取量の50-60%とされていますが、世界的なエリートランナーの乳酸作業閾値は80%とも言われています。

つまりエリートランナー達は乳酸が溜まりにくく、呼吸も楽に動くことができるわけですから、末恐ろしいですね。

 

ランニングエコノミー 

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Danielsはランニングエコノミーが改善することでランニングパフォーマンスも改善する可能性があると報告しており、これまで多くの研究者たちがランニングエコノミーの重要性を報告してきました。

 

ランニングエコノミーは「効率的な酸素消費」と意訳できます。車で言うとどれだけエコに走ることができるかと言うことです。

 

最高速度とガソリンの量が同じだとしても、低燃費車の方が長い距離進むことができますからね。
 

それと同じで、あなたが誰かと一緒にランニングをして、全く同時に走り終わった時もお互いの疲労感は違うはずです。

 

このように低コストでいかにエネルギーを少なくして走ることができるかが、ランニングパフォーマンスを上げる鍵となるのです。

 

実際にフルマラソンのタイムに関しても、最大酸素摂取量とタイムの相関よりも、ランニングエコノミー+最大酸素摂取量とタイムをみた方が高い相関が得られたとの報告も上がっています。

 

しかし、ランニングエコノミーと言うのは少々複雑なもので、

生体力学、代謝、神経筋連関、心肺連関などなど様々なことが影響を及ぼすため、一口に言い切ることができません。

 

ランニングエコノミーの主な要素として、「レッグ スティフネス」と言われている指標が大きく関係するといわれています。

 

レッグ スティフネスとは、下肢全体をバネとしてみなした場合、その特性を表す機能的指標として、身体重心の変位と外部から加えられた力の関数で表現される値で、値が低いと動作効率やパフォーマンスの低下をもたらすと言われています。

 

 Aranpatzisはレッグ スティフネスが高いほどランニングエコノミーが高くなると報告しており、この結果を裏付けるために、28人の長距離ランナーをランニングエコノミーによって3つのグループに分け、レッグ スティフネスが最も高いランナーが最も良いランニングエコノミーを示していることが明らかとなりました。(Avela)

 

 

ではなぜレッグ スティフネスがランニングエコノミーに関係するのでしょうか?

 

これらのメカニズムとして、Avelaはこのように述べています。

 

下肢の1つの神経が支配する筋線維の数が多く、さらに筋肉内のエネルギー貯蔵量が多いことが起因していると述べています。

 

しかし、この問いに筆者は疑問を抱きました。

下肢の1つの神経が支配する筋線維の数が多く筋肉内のエネルギー貯蔵量が多いと言うのであれば、お相撲さんが最もレッグ スティフネスが高いんじゃないかと感じたのです。

 

しかし、世界のトップランナーを見てもお相撲さんのような体型の方はいないですよね。

 やはり、レッグ スティフネスだけでランニングエコノミーは語れないようです。

 

そこで、本ブログでは、最大酸素摂取量・乳酸代謝閾値・ランニングエコノミー及び、最新の知見を考察していきます。もう何も考えずに走るのはもうやめましょう。すべての走り屋の方々に向けて情報を上げていきます。  

走りを極める ランニングパフォーマンスの科学を考えよう。 以上

 

【Reference】

  1. Anderson T. (1996). Biomechanics and running economy. Sports Med. 22 76–89. 10.2165/00007256- 199622020-00003
  2. Avela J., Komi P. V. (1998). Reduced stretch reflex sensitivity and muscle stiffness after long-lasting stretch-shortening cycle exercise in humans. J. Appl. Physiol. Occup. Physiol. 78 403–410. 10.1007/s004210050438 
  3. Weltman A. (1995). The blood lactate response to exercise. Hum. Kinet. 18 81–97

【心不全の最新のトピック】心不全の新しい指標

心臓は、自律神経と密接に関係しており、健常の場合は交感神経と副交感神経が規則的にバランスをとっています。

しかし、心疾患や脳血管疾患などコンディションが障害されていると、多数の有害事象を生じることが報告されています。

例えば、副交感神経刺激が減ることで心機能低下と関連があることも明らかとなっていたり、またアドレナリンの活動は、死亡率と大きく関係しています。

このように心臓と自律神経及びカテコラミンの関係は密接に絡んでいます。

 

そんな中近年これらの自律神経・カテコラミンに加えて新たな心機能の指標となる神経伝達物質が明らかとなりました。

ニューロペプチドYという神経伝達物質です。

 

心大血管疾患領域で大きな注目を集めたのは、2019年にオックスフォード大学のneilらの研究です。

NeilらはニューロペプチドYの上昇と心筋梗塞の予後が大きく関連していることを明らかにしたのです。

これを機にニューロペプチドYという神経伝達物質と心機能との関連が進められるようになりました。

 

ニューロペプチドYとは?

ニューロペプチドYは心臓の神経接合部から、カテコラミンなどと一緒に放出されます。

 

ニューロペプチドY(NPY)という神経伝達物質は、1980年代に豚の脳から抽出された内因性生理活性ペプチドで、36個のアミノ酸より構成されていることが明らかにされました。

ニューロペプチドYは哺乳類の脳や末梢交感神経末端に広く分布し、心臓においては冠動脈周囲の交感神経末端に多く存在し、循環動態に重要な働きを果たしています。

そんな中、Neurocardiology Research CenterのOlujimaらは、心筋梗塞だけでなく、心不全患者の予後にもニューロペプチドYが関係しているのではないかと疑問を呈しました。

 

カテコラミンの増加が、心不全と関連があることはこれまでに報告されていましたが、ニューロペプチドYとの関連はこれまで明らかとなっておりませんでした。

 

今回は、ニューロペプチドYと心不全の関係について考えていきましょう。

 

ニューロペプチドYと心不全

健常者のニューロペプチドYは約4.5±2.5pg/dLと言われております。

Olujimaらが、心不全患者(HFrEF)105人を対象にニューロペプチドYを調べた結果、健常者と比較して顕著に上昇していることがわかりました。

 

中でもニューロペプチドYの値を 130pgを基準に比較してみると、≧130pg/mL以上の患者は、<130pg/mLの患者よりも約9.5倍死亡率が上がることを示したのです。

 

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ニューロペプチドYの作用とは?

これまでに

・血管収縮作用

・副交感神経の活動を抑制

・心筋カルシウムの活動増加

がニューロペプチドY作用として報告されており、微小血管の機能障害や心筋障害で上昇することがneilらによって示されております。

 

ではこのニューロペプチドYは何が原因で上昇するのでしょうか?

 

現在、不明な点が多く、明確な答えは得られていませんが、

基礎研究にて、心筋梗塞を発症した豚の星状神経節のニューロペプチドY免疫反応が増加することが明らかとなっております。

 

今回、ニューロペプチドYの値を≧130pg/mL(予後不良群)と<130pg/mL(予後良好群)で患者背景を比べたところ、糖尿病、高血圧、腎機能障害、6分間歩行テストがニューロペプチドY≧130pg/mL(予後不良群)有意に関連することがわかりました。

 

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また、ニューロペプチドYの放出はアドレナリン作動とも関連していると言われております。130pg/mLを超えると重度のアドレナリン過剰分泌を来している状態であると考えられます。

 

ニューロペプチドYが高い=心機能が悪いなのか??

 

これまでニューロペプチドYの上昇が心不全や心筋梗塞と関連を認めることが示されました。しかし、必ずしも、心機能が悪い=ニューロペプチドYが高値というわけではないようです。

 

拡張能が低下すると、ニューロペプチドYは低下することが分かったのです。

確かに、Olujimaらは収縮能が低い心不全(HFrEF)を対象としておりました。

 

つまり、拡張能が低下する心不全(HFpEF)の場合はニューロペプチドYが過小評価されてしまう可能性があるため、心機能の予後として使えないと可能性が上げられました。

また、ニューロペプチドYがNYHA分類とは関連しないことも明らかとなりました。

 

これらのことから、ニューロペプチドYの値の解釈には気を付けなければならないことがわかりました。

 

まとめ

ニューロペプチドYという神経伝達物質は心筋梗塞や心不全などの心疾患の生命予後を予測する指標になると考えます。

 

今回の研究で分かったこと。

・ニューロペプチドYは腎機能、6分間歩行テストと関連がある。

・ニューロペプチドYは死亡率、心不全再入院率の増加に関連がある。

 

私自身、理学療法士として今回注目するのが、6分間歩行テストとニューロペプチドY

に関連があるということです。

 

もしかすると今後、ニューロペプチドYを減らして長生きするために運動耐用能を上げよう!という考え方が生まれてくるかもしれませんね。

 

 

Reference

 

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HFrEFとHFpEFで最大酸素摂取量の改善の仕方が違う? 最大酸素摂取量が向上するメカニズムとは?

世界では2000万人以上が心不全と診断されており、昨今の高齢化に伴い心不全患者は増加の一途をたどっております。

そして心不全による死亡率は高く、世界で早急に対策を立てていかなければならない課題と言えます。

 

心不全は大きく2種類に分けることができ、心不全患者のおよそ50%は左室駆出率が減少したHFrEFという状態。残りの50%は、左室駆出率の低下しないHFpEFという状態と言われています。

 

HFrEFは収縮不全を生じている状態です。

 

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左室の心筋の収縮が弱く、(あるいは弁による弊害)大動脈に血液を送ることができない状態です。

 

HFpEFは拡張不全を生じている状態です。

 

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左室駆出率は健常人と同等なので、大動脈に血液を送る力は強いにも関わらず、左心室に血液が入ってこないがために、結果的に大動脈に血液が送りにくくなっている状態です。

 

慢性的な心不全は運動耐用能の低下を認め、酸素摂取量も減少していると報告されています。

特に、心不全患者は健常者と比較してpeakVO2は35%低下するとの報告も上がっております。

 

実際に心不全患者さんに機械を用いて血管内のモニタリングを行うと、中枢(酸素運搬能力)から末梢(骨格筋血流速度、ミトコンドリア機能)らの減少が明らかとなりました。

 

つまり、酸素摂取量が低下した患者さんは、日常生活を送るだけでも最大努力を必要とし、結果的に不活動、あるいは廃用症候群に至ってしまうケースが多いのです。

 

 ここでWesley らはある疑問を呈しました。

「同じ心不全と言っても、HFrEFと、HFpEFでは心機能が違う。なのになぜ、どちらも運動を行うと酸素摂取量が向上するのだろうか?」

 

この問いに答えるため、Wedleyらはメタアナリシスを作成し、rEF,pEFの違いによってこれらの酸素摂取量の改善の仕方に違いがあるか明らかにしようと試みたのです。

 

HFrEFの心機能の変化

HFrEFはかつて大きな論争がくり広がっていました。

運動療法で左室の機能が向上する!と報告するものから、左室機能は変わらないと報告するものまで様々でした。

 

そんな論争は、Haykowskyらの、メタアナリシスによって1つの答えを導いたのです。

有酸素運動を行った群で左室駆出率(LVEF)が2.6%増加し、拡張期左室容積(EDV), 11.5mlが減少、収縮期左室容積(ESV)が12.9ml減少するという左室機能が向上することを、

Haykowskyらが明らかにしたのです。

 

このことから、臨床的に安定したHFrEFにおける有酸素運動は心臓のリモデリングを行い、拡大した心臓を細くすることができることが示されたのです。

 

 また、HFrEFに対する高負荷インターバルトレーニングの報告も見られました。

高負荷インターバルトレーニングを4-6ヶ月実施したことでpeak VO2が23%改善し、

動静脈酸素格差、下肢血流速度、1回心拍出量も実施前に比べて有意に改善を認めました。

しかし、有酸素運動では減少を認めた拡張期左室容積(EDV)や、収縮期左室容積(ESV)には改善を認めませんでした。

 

HFpEFの心機能の変化

HFpEFについても、ある論争が起こっておりました。

fuzimotoらは、pEFにおいて1年間の高強度のインターバルトレーニングを行った結果、左室コンプライアンスの改善は認めないと報告しています。

 

一方で、

Haykowskyらは、HFpEFの患者の16週間の運動療法フォローを行った結果、動静脈酸素格差と最大酸素摂取量は改善するものの、心機能は改善しないことを明らかにしたのです。

 

また同様にHFpEF に12週間の高負荷インターバルトレーニングをおこなった研究でも同様の結果となりました。

 

HFrEFの血管機能

HFrEFに対して有酸素運動最大酸素摂取量の60-70%の負荷量での運動療法を行ったで結果,心大血管機能の改善を認めたとの報告が上がっています。

血管機能の中でも特に変化を示したのが、アセチルコリン(ACh)です。

 

Linkeらの研究では短期間(4W~)の有酸素運動だけでアセチルコリンが2.5倍増加したことを報告しており、十分に橈骨動脈の血管拡張能力が改善したことを明らかにしました。

 

同様にBelardinelli らも、長期間(2〜6ヶ月)で有酸素運動をした結果、上腕・橈骨動脈の血管拡張反応120%改善したとの報告も明らかとなっています。

 

 高負荷インターバールトレーニングvs有酸素運動 血管機能の変化

両様式でも最大酸素摂取量と血管拡張機能の改善を認めたが、高負荷インターバールトレーニングの方が、血管拡張機能の改善の程度は大きかったと報告されています。

 

これらのことから、血管拡張機能が最大酸素摂取量の改善と関連があることが示唆されました。

しかし、なぜ血管拡張機能が向上すれば、最大酸素摂取量の向上に寄与するのでしょうか?

  

この疑問にいくつかの考察があげられました。

Sullivanらは、血管機能の改善によって骨格筋の収縮時に酸素を速やかに運搬できるようになった結果、ミトコンドリア内に酸素を多く取り込めるようになったことで最大酸素摂取量が増加したのではないかと思われました。

 

さらにHambrechtらは長期の介入研究にて、4-6ヶ月の介入で、骨格筋の血管抵抗性が低下し、骨格筋血流量,酸素運搬能力、最大酸素摂取量、動静脈酸素格差が増加したことを報告しています。

また、赤血球に結びついた酸素が筋肉内のミトコンドリアに輸送される能力についても実施前よりも39%改善することが報告されている。

 

これらのことから、血管機能が改善することは、あらゆる面で良い効果を及ぼすことが示唆されました。

HFpEFの血管機能

まだHFpEFの血管機能を報告した論文数は少なく、不明な点は多いです。

しかし、Angadiらの報告だと、4週間の高負荷インターバルトレーニングを実施しても、HFpEF患者は血管拡張機能が改善しないことを報告しており、未だ、pEFの血管機能についての研究が今後の課題と言えます。

HFrEFの骨格筋機能

6ヶ月にわたって、HFrEFに対して有酸素運動を実施することで、骨格筋内のミトコンドリアの増加、シトクロムCの密度の増加が認められた。

シトクロムCの増加は最大酸素摂取量の増加と強い関連があるとされます。(r=0.87 p<0.001)

 

さらに筋肉の線維が(typeⅡからⅠへ移行)、そして筋線維の毛細血管密度も増加すると言われている。またtyniらの別の研究では、運動療法によって、クエン酸回路での代謝が45→58%まで増加することが明らかとなったのです。

 

HFpEFの骨格筋機能 

これまでHFpEFに対して、骨格筋機能についての報告は少ないです。

しかし中には、動静脈酸素格差の増大(筋肉でたくさん酸素を取り込める)や外側広筋の酸素取り込み量が増加するとの報告が挙げられています。最近では12週間の高負荷インターバルトレーニングもpeak VO2 を改善したとの報告が上がっています。

 

筆者の見解ですが、HFpEFに対して有酸素運動・高負荷インターバルトレーニングを行っても心機能が改善することは明らかになっておりません。にも関わらず、最大酸素摂取量が増加するということは、動静脈酸素格差の増大が、大きな割合を占めているのかもしれません。

 

まとめ

有酸素運動時のHFrEFとHFpEFの反応

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高負荷インターバルトレーニング時のHFrEFとHFpEFの反応
 

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