真咲輝司 Rehabili knock

大学病院で勤務する理学療法士

ランニングエコノミーを知らないとマラソンタイムは上がらない。

 

どうすればマラソンのタイムが速くなるか?

ランナーが常に向き合う疑問だ。

 

結論から言うと、持久力と筋力を鍛えただけでランニングパフォーマンスはそんなに上がらない。

ランニングパフォーマンスを上げて速いタイムで走るには「ランニング エコノミー」と言う概念を知っておかなければならない。

 

「ランニング エコノミー」は直訳で走りことの経済性を言う。

なんのことかと言うと、いかに無駄なエネルギーを使わずに燃費良く走ることができるか。と言う意味である。

「ランニング エコノミー」は近年注目を集めており、世界中で研究が勧められている。

 

実際に、*Pub Medで検索すると年々「ランニング エコノミー」に関するデータが増えていることがわかる。

*Pub Med 米国国立医学図書館が作成している医学分野の代表的な文献情報データベース

 

f:id:rihataikin:20200809091416p:plain

 

今日はランニングパフォーマンスを上げるために必要な「ランニング エコノミー」について考えてみよう。

 

 

ランニングパフォーマンスを高める

 

 

ランニングパフォーマンスは次の3つで構成される。

・最大酸素摂取量

・乳酸作業閾値

・ランニングエコノミー

 まずはこの3つを知ることがタイムを上げるために重要だ。

f:id:rihataikin:20200525192247p:plain

図 筆者作成

 

 

最大酸素摂取量

最大酸素摂取量を医学的に言うと、身体の中にどれだけ酸素を取り込むことができるかを意味する。

 

 酸素は身体の中でエネルギーを作るために必要な材料だ。

 

言い換えれば酸素を多く取り込める人ほどたくさんのエネルギーを作ることができる。

 

普段、我々が椅子に座ってくつろいでいる時に酸素を1分間に3.5ml/kgほど摂取している。

 

f:id:rihataikin:20200809095306p:plain

そして運動をすれば、動くために使うエネルギーを作るために換気量を上げて身体に吸い込む酸素を増やしていく。

一般成人の場合は1分間に50ml/kgほどまで酸素を取り込めると言われている。

それが、世界で活躍するトップマラソンランナーともなれば1分間に80-90ml/kgほどの酸素を取り込めるようになるのだから驚きだ。

f:id:rihataikin:20200809095803p:plain

 

  走る速度を徐々に上げて運動負荷を上げていくと、必要なエネルギーを作るために取り込む酸素の量は次第に増えていく。しかし、酸素を身体の中に取り込める量にも人それぞれ限界がある。

 

 図で示したように、運動負荷を上げてもそれ以上酸素摂取量を上げられない地点に達したポイントを最大酸素摂取量と言い、言わば体力の限界地点のようなものだ。

 

 最大酸素摂取量に到達したら次第に走ることができなくなってしまう。  

f:id:rihataikin:20200525192851p:plain

 

 

よく勘違いされがちだが、ここで言う酸素を摂取する量というのは、深呼吸して肺の中いっぱいに空気を入れることではない。

 

肺に入れた酸素が筋肉の細胞に取り込まれることを酸素摂取量という。

まちがっても、深呼吸しながら走ればタイムが速くなるとは思わないようにして頂きたい。

 

実は酸素摂取量は次の式で求めることができる。

酸素摂取量1回心拍出量×心拍数×動静脈酸素格差

 

ここでいう動静脈酸素格差というのはかなり深い話になってしまうので別の機会にしようと思う。

 

 

乳酸作業閾値

 Welt man らの研究で最大酸素摂取量を上げるだけでなく、乳酸作業閾値の値もランニングパフォーマンスに大きく関わることが明らかとなった。

 

 全力で50mを走り終わった後に足にくる重だるい感じをよく乳酸が溜まると表現するが、そのイメージで十分だ。

 

 マラソンを走るときもだんだんと、足に乳酸が溜まってくるだろう。これがランナーにとっては大敵なのだ。ニューヨーク市立大学のWelt manの報告によるとこの乳酸をいかに溜めずに走ることがマラソンタイムを上げることに直結すると報告している。

 

 この乳酸が溜まってくる地点を嫌気性作業閾値という。

 

一般成人は最大酸素摂取量の50%くらいの地点に嫌気性作業閾値があると言われているが、世界のトップランナーは最大酸素摂取量の80%くらいの地点に嫌気性作業閾値があるというのだから衝撃だ。

 f:id:rihataikin:20200525192822p:plain

 

 

この最大酸素摂取量乳酸作業閾値に加えて重要なのが

ランニングエコノミーという概念である。

 

 

 

ランニングエコノミー 

 

最初の項でランニングエコノミーはいかに無駄なエネルギーを使わずに燃費良く走ることができるか。と言う意味だと話した。

 

そもそもどうやってこの曖昧なランニングエコノミーという概念を確かなものにしていくか。

 

実はランニングエコノミーも評価をして客観的な値として調べることができる。

 

ランニングマシーンを使用し、10km/hのスピードで10分間走ったとしよう。

同じ速度で走ったとしても、人それぞれ消費するエネルギーは違うのだ。

 

酸素摂取量の話を読んでくれた方はもう気づいた方もいるかもしれない。

 

つまり、同じ速度で走っても酸素消費量が全く違うのだ。

 

カルフォルニア州立大学のDanielsらやAranpatzisの報告でもランニングエコノミーが向上するとマラソンタイムが速くなる可能性があると報告している。

 

ランニングエコノミーの概念は車に例えるとわかりやすい。

無駄なガソリンを消費せずにどれだけ長く走れるかということが重要なのだ。

 

つまり、マラソン界ではフェラーリのようなスポーツカーよりも、プリウスのようなエコカーの方が強いということだ。

 

 

 実際にフルマラソンのタイムは

最大酸素摂取量とタイムの相関だけをみたものよりも、ランニングエコノミー+最大酸素摂取量とタイムをみた方が高い相関が得られている。

 

次回は、ランニングエコノミーについて詳しく見ていこう。

 

f:id:rihataikin:20200809105647p:plain

 


マラソン・ジョギングランキング

にほんブログ村 その他スポーツブログ マラソンへ
にほんブログ村

【Reference】

  1. Anderson T. (1996). Biomechanics and running economy. Sports Med. 22 76–89. 10.2165/00007256- 199622020-00003
  2. Avela J., Komi P. V. (1998). Reduced stretch reflex sensitivity and muscle stiffness after long-lasting stretch-shortening cycle exercise in humans. J. Appl. Physiol. Occup. Physiol. 78 403–410. 10.1007/s004210050438 
  3. Weltman A. (1995). The blood lactate response to exercise. Hum. Kinet. 18 81–97